服薬に関する知識も介護現場では必要

介護サービスの利用者の多くは、何らかの薬を日常的に服用しており、年齢的にみても何らかの病気に見舞われていてもおかしくはないだろう。原則として、医療行為は医師にのみ許可されている。利用者の家族や親族など、特別に許可が下りている者以外は医療行為は禁止されているのだ。しかしながら、現実的には介護職員が何かしらの医療行為を行うケースが増えているのも現実だ。実際にとある介護施設では、胸の苦しみを訴える利用者に対して、介護職員が自らが服用している薬を飲ませるという事態も起こっている。大事に至らないとしても、大きな事故につながる可能性も十分に考えられる事案である。

大学や研究所、専門学校などの医学部・薬学部で学んだ経験を持たない介護職員にとっては、医療行為か否かを判断すること自体も難しいだろう。一例として、普段何気なくしている爪切りも、厳密にいえば医療行為に該当するという見解もある。現場の混乱を回避する目的として、厚生労働省もガイドラインをようやく作成した。それによれば、血圧測定や点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服などは医療行為に当たらず、介護職員が行うことも可能ということだ。この他、坐薬や軟膏などを使用するといった介護現場では当たり前のように目にする行為も、介護職員が行える行為とのことである。ここで気をつけなければならないのは、医師や薬剤師などによる研修や訓練を受けないまま、介護職員としてこれらの行為をすることによる事件事故の発生だ。介護職員は、薬や医療行為に類する知識を持つことも否応なしに求められるといえる。